第二話 紙人間

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本当にあった心霊話

第二話 紙人間

[体験者] 大阪府大阪市在住・坂田夏美さん・27歳・メーカー営業職

引っ越したばかりのマンションの1階。そこには以前、管理人が住み込んでいたという空き部屋があった。今はもう無人となっているはずのその部屋から、ある日の深夜、おかしな物音が響いてきた―――。

紙人間

今年の春、市内中心部に建つマンションに引っ越しました。ファミリータイプの間取りの部屋に姉と同居して家賃は折半ということだったので、1人暮らしをしていた時よりも若干月々のお金が浮き、しかも前より広くて便利な所に住めると、私としてはまさに願ったり叶ったりの条件でした。築年数が古いマンションでしたが管理はそれなりに行き届いており、エントランスがオートロック仕様でないことを除けば何の不満もありませんでした。少なくともアレの存在に気づくまでは……。

住み始めて1ヶ月くらい過ぎた頃、残業とその後の飲み会で帰りが深夜過ぎになった日のことです。終電を逃してタクシーで帰ったのですが、運転手に道順を間違えて伝えてしまい、しばらく迷走した挙げ句マンション正面の大通り側ではなく一方通行になっている裏側の路地で下車することになりました。裏口からマンション内へ入ったのですが、そこから正面エントランスへ向かう通路はまだ使ったことがなく、何があるのかもよく知りませんでした。

「あれ、この部屋なんやろか」短い廊下の真ん中ほどに、2階から上の居室と同じタイプのドアがありました。100戸近くの世帯が暮らす大型マンションのため、エレベーターの数も4基。そのため1階はエントランスホールで占められていて、しかもちょっと入り組んだ造りになっています。私が入った裏口側はゴミ置き場や集合ポストとはちょうど反対の位置ということもあり、そこに未知のスペースがあることを知らなかったのです。ドアに表札はなかったのですが、内部から微かな音が響いていました。バタン、バタン、バタン…普通の生活音とは違う妙に規則的な音でした。室内に誰かいるのか、それとも何かの機械音なのか?電源やポンプ関係の設備室は別にあるので、一体何の部屋なのか気になりました。

翌日の土曜日、昼過ぎに姉と一緒に買い物へ出掛ける際、管理人のおじさんに昨夜見た部屋について訊いてみました。すると、「ああ、あそこね。前は管理人が寝起きしてたんやけど、今は住み込みの常駐勤務がなくなったんで、備品を置く倉庫として使ってます」「中で変な音がしてたんですが」「え、そんなはずあらへん。聞き違いやないですか」「いや、絶対にあそこから聞こえてました」それなら試しに見てみようということになり、管理人と一緒に部屋の前まで行きました。管理用の鍵でドアを開けると内部は1DKの間取りでしたが、言っていた通り掃除用具や備品の段ボール箱、赤色のコーンなどが積まれているだけで、音を出すような機械類は一切見当たりませんでした。ただ、私が変な音を聞いたことは一応、管理会社とマンションの理事長に報告しておくと言っていました。「万が一やけど、知らん間に鼠でも入り込んでたらまずいですからね」

それからしばらくは別に何もなく過ごしたのですが、そんなある日の夜、コンビニへ買い物に行った帰りに再び裏口を使うことがあり、その時もまた例の音が聞こえました。「やっぱり、音がしてるやん」ドアの前で立ち止まり、耳を澄ませました。バタン、バタン、バタンと何かが壁にぶつかっているような音はしばらく続き、やがてそれがピタリと止んだかと思うと、今度は郵便受けの蓋が内側から開きました。「えっ!」呆気に取られる目の前で、長くて黒い紙のような物がスルスルと這い出してきました。トイレットペーパーのような紙の山は瞬く間に私の足許まで溢れ出し、フワリと盛り上がっていったのです。それが人の形になったのと、私が逃げ出したのはほぼ同時でした。エントランス側への行く手を塞がれてしまったので、入って来た裏口から路上へ飛び出し、大通り沿いにあるファミレス近くの灯りの下で立ち尽くしていました。

幻覚を見たのだと何度も自分に言い聞かせましたが、それでも身体の震えは止まりませんでした。家にいるはずの姉にスマホから電話をしても一向に出る気配はなし。そこでしかたなくマンションの正面に戻ってしばらく逡巡していると、ちょうど帰宅してきたスーツ姿の男性がエントランスへ入って行くのが見えました。同じ棟の階下に住んでいる人で、顔を合わせれば会釈する間柄だったのですかさずその後に続きました。私の雰囲気が尋常でないことに気づいたのか、男性は集合ポストの前でこちらに振り向き、不審そうに声をかけてきました。「どうかしました?何、慌ててますの?」「いえ、あの、その、裏口の……」幽霊を見たとも言えず口籠もっていると、意外にも男性はすぐに合点がいったという顔になり「ああ、見たんやね、アレを」とポツリと漏らしました。「し、知っているんですか?」「裏口から入って見たんでしょう?夜はあっちを使っちゃダメですよ」。

男性の話によると、旧管理人室に何か得体の知れない物がいるのは古い住人の間では旧知の話だそうで、自治会で話し合ってお祓いまでしたものの全く効果がなかったそうです。「去年、マンションの管理会社が変わって、今いる管理人もその時に出向してきたから、たぶんまだそのことを知らんのですわ」「いったい何なんですか」「さあ、よう分からんけど、聞いた話では最後に住み込んでいた管理人が退去した後に、押し入れから持ち主不明の骨壺が見つかって、それから出るようになったとか。もう10年も前の話ですわ」。

その後、男性と一緒にエレベーターに乗り、部屋へ戻りました。姉は入浴の最中で、リビングのテーブルに着信ランプが点滅したスマホが放ってありました。とりあえずホッとひと息ついてソファーに腰掛けようとしたその時、くぐもった悲鳴が家中に響き渡り、髪を濡らした姉が全裸のままで部屋へ飛び込んできました。「どないしたの?」「で、出た!」「えっ!」「紙みたいにペラペラのおっちゃんがたった今、風呂場の天井から落ちてきた!お、お、オバケや!」その後、2人でくっついてガクガク震えながら浴室を見ましたが、すでにそこには何もいませんでした。そういうわけでせっかく借りたばかりのマンションですが、退去するかどうか迷っています。顔面すれすれでアレに笑いかけられた姉によると、その姿はまるで血塗れのボロ雑巾のようだったそうです。

霊能者による検証コメント

手記を読ませていただいた上で遠隔霊視を試みたのですが、当のマンションに出現する謎の霊の素性を知ることはできませんでした。普通に考えれば、旧管理人室で見つかった骨壺が原因ではないかということなります。しかし、いくら霊査しても因果関係が見当たらず、私も首を傾げました。実際に当地へ伺って直に調べれば真の原因を突きとめることができると思いますが、恐らくはそのマンションの建物ないしは立地に複雑な因縁がからんでいるのではないかと予想されます。

問題の霊自体はそれほど凶悪な性質の存在ではなく、他の住人の方々も無事に住み続けておられるようですので、性急な退去の必要はないでしょう。しかし決して気味が良い物ではありませんから、その辺のご判断はお任せします。とりあえずの応急措置として、霊が出たお風呂場の脱衣スペースに神社かお寺でいただいたお札を貼っておかれることをお勧めします。また何か新たな事態が生じた際はいつでもお知らせください。