霊媒師・イタコとは ~陸奥鑑定所の霊能者たち~
インタビュー:その8「嘉秀先生」
口寄せは恋愛だけではなく、人間関係全般の悩みに使えます。職場でそりが合わない上司や同僚、プライベートで不仲な人物、そうした人たちとの関係を改善することも可能です。
聞き手「嘉秀先生は、イタコの口寄せが及ぼす副次的な効果についていろいろとおっしゃっていますよね?」
「生口つまり生き霊を口寄せした場合の、相手の意識に与える特殊効果のことですね。」
聞き手「それについて詳しく教えてくださいますか?」
「他のイタコ霊能者の先生も言われていることなので繰り返しになるかもしれませんが…口寄せというのは、ご存じのように人の魂つまり霊体を術者自身の身体に憑依させて、その霊に口を貸す形で話をさせるというイタコ独自の霊媒術なのですが、その際、呼び出す霊が存命中の人物の場合、その霊体の一部を呼び寄せることになります。
それはその人の無意識領域を含んだ心の一部といってもよく、いわば分身です。その相手に対して何事かを頼んだり、訴えかけたりすると、それが心の奥底に一種のトリガーみたいな形で残存するわけです。口寄せを終えて霊体の一部が持ち主の元へ戻った後、ふとしたきっかけでトリガーが作動し、自分は何々をしなくてはいけないというのではないかと考えるようになるわけです。
もちろん、その理由は本人には分かりません。あくまで霊的な意識の部分で起きていることなので。それでも、本人は時間が経過するほどに「やらなくてはいけない」と強く思いこむようになって行動を起こすのです。例えば片思いの相手を口寄せして、お客様の方が『私に振り向いてください』と言えば、今言ったような心理メカニズムが自動的に働いて、相手の側が好意を抱いてきます。」
聞き手「なるほど。恋愛に悩む女性にとっては、この上もなく心強い武器になりますね。」
「恋愛だけではなく、人間関係全般の悩みに使えますよ。職場でそりが合わない上司や同僚、プライベートでの不仲な人物、そうした人たちの生き霊を口寄せして「私に対してもっと良い印象を持って欲しい」と言えば、実際にその通りになります。」
聞き手「電話占いでイタコの口寄せに人気が集まっている理由はそういうことなのですね。」
「さあ、どうでしょうか。一般の方は口寄せのそうした効果について、必ずしも分かっているとは思いませんね。やはり相手に対して実際に話せないことを、口寄せを通して話したいという気持ちで鑑定を受けるケースの方が圧倒的に多いのではないでしょうか。」
聞き手「そういうお客様に対して、口寄せすれば相手の気持ちが思い通りになる、ということをお話しされるのですか?」
「ええ、もちろんご説明しますよ。そのときは皆さん半信半疑ですが、だいたい遅くても一ヶ月前後で相手の意識に変化が生じますから、後になってまた鑑定を申し込まれて『先生の言った通りになりました!』とご報告を受けます。最近はそれがクチコミで広がってきているようですね。電話占いでイタコの口寄せを受けると恋の願いが叶うと。」
聞き手「そうなると、恋愛問題で悩んでいる女性のお客様が殺到しているのではないですか?」
「はい。一日に鑑定するうちの八割方はそういう悩みですね。以前は、亡くなったご家族や友人と会話したいというお客様が多かったのですが、今はもっぱら恋愛相談です(笑)。」
聞き手「考えてみれば面白い現象ですね。」
「そうですね。先達のイタコの方々が聞いたら驚かれると思います。事実、この前、ある老イタコに会う機会があったので、話の最中に何気なくそのことを報告したらやはり目を丸くしていました。『時代も変わったもんだねえ』としみじみ言っていましたよ。」
聞き手「電話占いは従来のイタコの概念を変えたとも言えますね。」
「たしかにそうですね。少なくとも暗くて不気味な印象は相当、払拭されたのではないかと思います。私としては今後も電話鑑定を中心に活動を続けながら、日本古来の貴重な伝統であるイタコの霊媒術を次世代に継承していけるよう努力する所存です。」